いやはや、この本は大笑い。1ページに2回くらい、いやそれ以上笑っていた。
久々ですよ。こんなに笑える本は。
タイトルからすると、わたしが苦手な自己啓発本の類なのではないかと
読む前は疑心暗鬼だった。
「弱くて勝てるわけないやん。もしかして野球で負けても人生で勝ち組に
なるとか、そういうこと?」と疑っていた。(←なぜ読むか。)
そしたら、勝てないわけではないんですねえ。開成高校野球部は。実際勝ってる。
正確にいえば勝つこともある。そしてその方法が、理にかなっているというか
なんというか……
その方法についてのネタバレは自重することにして、
開成高校野球部の日常は、甲子園を見、贔屓チームを応援する普通の日本人に
とっては驚愕である。
いや、野球部ってそんなんで出来るの?
何しろ、キャッチボールでさえエラーしまくりなのである。
ボールを受け切れず後ろに転がる。その時のボールの拾いに行き方も
悠揚迫らざるというか、機敏さが足りないというか……
「エラーは開成の伝統ですから」と言い切る選手までいる。
「守備は苦手ではないけど下手」という選手もいる。
自他ともに認める流れるようなフォームでゴロを処理する選手も、
ボールを拾うのを忘れていたりする。
ボールも打者も怖いからそれらからなるべく遠い外野を守るという選手もいる。
こういう顔ぶれの場合、エラーするのが日常茶飯事なので、
エラーの一つや二つではびくともしない。エラーはする前提なのである。
投手の条件もずば抜けている。
投げ方が安定している。――ピッチャーの条件はこれである。
なぜなら投げ方が安定していないとストライクが入らない。
ストライクが入らないと試合が成立せず、相手チームに失礼である。
とにかくストライクを入れることが出来る選手を投手にする。
しかし「ストライクを入れることが出来る」は、決して剛腕も針のような
コントロールも意味しない。むしろ打つのに手ごろな棒球ということも……
何しろ監督自ら「甘い球を投げろ!」とベンチから檄をとばすのだから。
もうね、現代の落語だよ。
我慢しようとしても、身のうちから湧いてくる笑い。
2回読んでも3回読んでもおかしくて仕方がない。
選手たちのインタビューもたっぷりあるのだが、それがほんとに面白い。
さすが開成というか、やはり開成というか。
頭で生きる人たち。
この素材をこういう風に書ける著者もなかなかのもんだと思った。
けっこう難しいと思うよ。こういう素材で書くのはライターであるイメージが
あるけど、この人はもう少しで作家だと思った。
ノンフィクション作家。が、あとわずかのところで物足りないが。
とりあえず笑えるという意味では大変オススメの本ではあるけれども、
これを読んで何かを得ようとか、開成高校野球部のストーリーを完結させようとか
そういう欲を出してはいかん。
論理によって体を動かす人々の、そのずれ具合を堪能する。
うん。やっぱり落語ですね。
文庫、買おうかなあと思っちゃった。再読に耐える本である。

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